ルール改正という記事を書いて思い出したのですが、今回は結構まじめな話をします。ゴルファーとして一番大事なこと、「マナーとフェアプレー」についてのお話です。
競技委員をしていた時のお話
以前、全国規模で行われるある大きな団体の競技委員をしていました。
競技委員の仕事はいくつかあるのですがその中のひとつ、「スコアチェック」があります。
これはスコアの記入ミスがないか?、合計が間違えてないか?などいわゆる”アテスト”というものです。
プロの試合でもラウンドが終わるとスコアを提出する為に小屋みたいなところに入っていく姿がTV中継でも見られると思います。
2019年のルール改正
2019年に大きくルールが変わったのは皆さんご存じだとは思います。
競技委員をするにはルールの勉強は必須で、変更したルールを理解するのに苦労したのを覚えています。選手の方に聞かれたときに答えられないといけないのでルールブックを持ち歩いていました。
競技委員だけでなく、プレーヤーもルールの変更にかなり戸惑っていたようで、アテスト時に色々質問を受けました。
その大会は女子の大会で、予選を勝ち抜いた選手が集まる地区決勝という舞台です。
参加する選手は高校生など学生が多くプロを目指している人、実際にアマとしてプロの試合にも出た事もある人もいるレベルの高い大会です。
私が競技委員としてアテスト会場にいるとある選手がルールの事を尋ねてきました。
その内容は、「バンカーに入っていると思ってセカンド地点に行ってみたら、バンカーを越えてOBだったので、そこから2打罰でドロップしてプレーをしたのですが・・・。」というものでした。
このルールは「ローカルルールのひな型」として定義されているもので、あくまでもプライベートのゴルフについてであり、競技には適用されないものなのです。
競技委員長に確認するとその場合「失格」になるとの裁定でした。
この時私は「まあそうだろうな、何でそんなことしてしまったかな?」と思いましたが同時に「ルールが大きく変わったので間違えてしまう人がいてもおかしくないだろうな」とも思いました。
その事を告げるとその選手(高校生)が失格のショックなのでしょう、泣き出してしまったのです。
悔しい気持ちやいろいろ思う事もあったでしょうから泣いてしまうのもしょうがないだろうなと思いました。
二日間競技の一日目だったので二日目はプレー出来なくなってしまいますし、高校生なので親御さんが付き添いでしかも泊りがけで来ているのですから。
大きな大会なので本当に悔しかったと思います。
少しするとそのお父さんが「どうにかならないのか?」と競技委員長の所に来て話をしていたようです。
確かにルール変更があってわかりづらい事もありましたが特別扱いする事は絶対にありません。個人的にはアテスト前に言ってくれれば何とかなったのかなぁ?と思いました。
でもこの子、話をしに来た時”もしかしたら自分は失格になる”と思っていたと思うのです。
なのにちゃんと申告してきた事はゴルファーとして素晴らしい事だと思いませんか?
「ルールだから当たり前だ!」
という人もいるとは思いますが競技委員がすべてのプレーを把握しているわけでわありません。アテスト後の話でスコアチェックも問題なく終了していて本人も故意ではなく勘違いをしていたのですから申告するのは非常に勇気のいる事だったと思います。
ですからお父さんの気持ちはわかりますが自分の娘さんを誇りに思って欲しいと思いましたし褒めてあげて欲しいと思いました。
最後に
プレーヤーとして当然しなければならない事なんですが、私も彼女の事を同じゴルファーとして尊敬します。きっと彼女はこの事を糧に素晴らしいゴルファーになってくれるのではないかと思いました。
競技委員の夕食の場で「かわいそうで見ていてこっちも泣きそうになったよ」とか「出来る事なら何とかしてあげたあったなぁ」など彼女の話が出ました。
この舞台に上がるのにどれだけ努力をしてきたのかは容易に想像できます。
一生懸命頑張っている人を皆応援したくなるものだなぁ!と改めて思いました。
競技委員という立場上、少し難しかったとは思いますが、彼女に何か一言でもいいので励ましの言葉をかけてあげられなかった事を少し後悔しております。